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↓の続き


僕は考える、どうしたらスズキを渋谷さんに連れていけるかと。
「今日、元木部活じゃん」
「なんで僕が元木などと帰らなくてはならないんだ」
「じゃあ、りょう君?」
「姫野は先輩と約束があるそうな」
「じゃあいいじゃあないか、僕と連れだってパン屋さんくらいさあ」
「いやだね、家と逆方向だ、し、お前どうせ僕にべーグルかシナモンロール買わせて半分こしたいんだろう」
「何故わかった」
「わからないほうがどうかしている」
「わかっているなら尚更、たのむようスズキ、このビスケットに免じて」
「嫌だね、だいたいおまえさっきからずうっと持ってるだろそのビスケット、溶けてるし」
「瀬川さんがくれたんだよ」
「よし、了解した、渋谷さんだな」
スズキはじつに素早く、僕の左手人差し指と親指の間からビスケットをぬすんだ。溶けたチョコレートがぬるりと僕の指先を這った。
「やたらと甘い」
「そりゃあ、チョコべったりだからね」
「そして溶けてる、」
「瀬川さんの愛さ」
「よきかな」
「よきかな」
スズキはようやっと英語の参考書を閉じた。僕は指先のチョコレートを舐めとるべきか否か迷っていた。スズキが顔をしかめた。
「指がきたない」
「舐めるか拭くべきか迷っているのだよ」
「お前っていつもそうだ」
スズキはかるーく失笑して、僕の左手首をひっつかんだ。なんだよ、も、なんでしょう、も喉元未満な僕など知らぬことといういつもの顔のまま、スズキは僕の指を、舐めた。
厳密にいうならば、僕の指先のチョコレートを舐めた。結構ねっとり舐めた。鳥肌。
「なにを、する」
「瀬川さんの愛だからな」
「お前、なんかそれ、かるくストーカーちっく」
「冗談の通じないやつ」
お前冗談なんて言わないじゃあないか、僕はなんとも跳ね上がったまま変動せぬ心拍数を気にかけることだけでひどく精一杯であった。
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