文章諸々
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ぼくたちが完璧なものにたいして覚束ない憧憬をいだくのはつまり自己の致命的な欠落をきっちり自覚しているからなんですよう。
この男のあのいかにも筋張ってなまあたたかい声帯からこれほどにまで甘ったるい声色がでるものなのかと私は夜の湿った空気を訝った。日中に降った雨のせいか、あたりには濃い霧がぼんやりと立ち込めて数メートル先の信号機も私には視認することができない。路面は黒色にいかなも濡れていて世界はあまりにも静かであった。
「霧の夜は」街灯がゆっくりと明滅する「夢のよう」
ですね。私はひとりごとを口先にこぼす。男は小さく吹き出した。
「夢なんてみたこともないくせに」
男は笑いか痙攣か定かではない振動を語尾にふくませて私の肩を気安くたたいた。きみのゆめなんてぼくがぜんぶたべてしまったんですよう。と。
「飲み過ぎです」私は当たり障りのない定型句を口にした「早く帰りましょう」
「酔っちゃいないんだ」
同じく定型句で皮肉げに笑う男の瞳はたしかに存外にさめていて私は背筋にねとりとした嫌な感覚をおぼえた。
「でもぼくは」男の目は死人のそれによくにていた「あなたの欠落が愛おしい」
この男のあのいかにも筋張ってなまあたたかい声帯からこれほどにまで甘ったるい声色がでるものなのかと私は夜の湿った空気を訝った。日中に降った雨のせいか、あたりには濃い霧がぼんやりと立ち込めて数メートル先の信号機も私には視認することができない。路面は黒色にいかなも濡れていて世界はあまりにも静かであった。
「霧の夜は」街灯がゆっくりと明滅する「夢のよう」
ですね。私はひとりごとを口先にこぼす。男は小さく吹き出した。
「夢なんてみたこともないくせに」
男は笑いか痙攣か定かではない振動を語尾にふくませて私の肩を気安くたたいた。きみのゆめなんてぼくがぜんぶたべてしまったんですよう。と。
「飲み過ぎです」私は当たり障りのない定型句を口にした「早く帰りましょう」
「酔っちゃいないんだ」
同じく定型句で皮肉げに笑う男の瞳はたしかに存外にさめていて私は背筋にねとりとした嫌な感覚をおぼえた。
「でもぼくは」男の目は死人のそれによくにていた「あなたの欠落が愛おしい」
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