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「私を殺せばあなたはしあわせになれるわ」
彼女の声は台詞の内容とはあべこべに、酷く確信にみちみちたものであった。わたしはたじろいた。
彼女はちいさく笑った、ように、みえた。もしかしたら口の端が痙攣しただけかもしれない、瞬きのタイミングの関係かもしれない。わたしがちっとも笑えていなかったことだけはやたらと明確に真であった。
それきり彼女はなにも喋らなかった、インテリアのごとく無言であった。つまりこの部屋はとてもとても静かであった。
わたしはあまりの気まずさに1ダースほど消えたくなった。
「どうしてそうおもうの」
苦し紛れのわたしの声はあほみたいに振幅していた。あまりによれよれで、恥ずかしくなる程度によれよれであった。彼女はぴくりとも表情を動かさなかった。
「すくなくとも、」
わたしは目の前の彼女は実はマネキンなんじゃあないかと心配になりはじめた。
彼女はうごかない。
「わたしはそうはおもわない」
「あなたは間違えている」
つまり即答である、即否定である。わたしは再度たじろいた。大いにたじろいた。
「このままだとあなたはずうっとふしあわせだわ」
「わ、わたしは」
「あなたはしあわせじゃあない」
それは事実だ。
「でも、」
「私を殺しなさい」
言い返す言語のすくなさにわたしは愕然とした。口が渇く。
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