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don't stay !
シャウト。密閉式イヤホンは決して音を漏らさない、僕の耳小骨は正確に振れて、僕はごく小さく音階を呟いた。ふぉあがっと、めもりーず、車体が大きく揺れて僕の歌未満はあっさりと掻き消えた。何事もない、とひたすらに電車はすすむ、(僕をのせて)。
「起きてる?」
「とても起きてる」
僕はちいさく返答した。粘つく唾液、寝起きみたいな掠れ声が、でた。
姫野は相変わらずの春めいたあまーい声で、くすくすわらった、天使だ!織先輩ならそう評するであろう。しかし、すずきくん変な声、と暴言が、イヤホンの隙間を縫って僕の耳にとどいた。
「失敬な、僕は多大に傷ついたよ」
「あ、聞こえた?でもほんとーに変な声なんだって、」
寝てたでしょう、姫野のほそっこい指が僕の髪の毛をなぜた。寝癖、まさか、寝てすらいない。
僕は試しに、あー、と小さく発声してみた、チェスターと姫野の声にまじって僕の声は大層貧相ないつものそれであるように感じられた。
「もうなおった、し寝てないよ、僕は、」
「えー、でも寝癖ついていたよ」
「姫野くんみたいにさらさらじゃあないですからね、多少ね止め跳ねはらいは許してくれたまえよ、」
「わあ、おこったー」
「おこってないよ」
「おこってるよー」
「おこってないってば」
なんだこのばかっぷるみたいな会話、うんざりとして姫野を睨むと、彼は女の子みたいな顔そのままににこーと破顔した。花畑がみえた。向かいの女子高生の一団から小さくも華やかな黄色いお声が沸き上がる。きゃあ。
「磁場が…」
「ん?」
「いや、」
鼻声のアナウンスが車内に響いた、次は終点ー、僕は両の耳からイヤホンを引き抜いた。いん、じ、えんど、車体は斜めにかたむいて速度は収束する。しけった空気がにわかに動き出す。
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