文章諸々
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「俺は耳がわるいんだ」
相変わらずの面倒くさそうで、かつ、はっきりとした声色でもって芦屋くんはつぶやいた。独り言というよりは俺へ、俺へというよりは窒素に、といった呟きであったので俺は一瞬黙して、そして首を傾げてみせた。
案の定芦屋くんはやたらかったるそうな顔をした。遅刻寸前、朝、シャツのボタンを一個ずらしちゃった時、みたいな。
「だから、何度も聞き返しても許してくれって、こと、だよ」
「なるほど」
言葉の足りない芦屋くん。面倒くさがってはしょっても結局再度説明を求められるのだと何回体感しても、彼はこの悪癖を改善しようとしない。
「どうしていきなり」
「説明しないと駄目ですか」
「まあ、気になるね」
「残念ながら、俺はそんなに気にならない」
「芦屋くんが気に留めるようなことなんてこの世にないっていう噂だけど」
失礼な、と胡散臭く笑って芦屋くんはその極端に細長い指で、俺のこめかみを結構強く突いた。地味に、痛い。
「暴力反対」
「ボウリョクハンタイ、人間は暴力の元に胡座かいて生きてるんだぜ、厚かましい」
「そういうの巷では屁理屈っていうらしいよ」
「ああ、西東くんの特技のこと」
「そう、芦屋くんの口癖のこと」
くすくす、耳にかかる、空気が細かくふるえる、笑い声。薄い唇が、愉快そうにゆるうく釣り上がる。俺は芦屋くんのこういう笑顔が、やたらすきである。撫でたくなる。
「ねむい」
しかし表情はゆるぎなく冴えている。
「君はいっつもねむいらしい」
「西東くんはいっつも眠そうだ」
「こればっかりはどうしようも」
「でも君の顔はわりとすき、だね」
愛嬌があるよ。
思わず顔を上げた。芦屋くんは相変わらず怠そうに、しかし楽しげな笑みをうかべた。だから俺はこの顔に弱いのだと。
「照れるんだけど」
「照れた顔もかっこいいぜ」
「馬鹿にしてるだろ、性格悪ー」
「きこえないねー」
都合のよろしいお耳様だこと!芦屋くんのにやにや笑いは延々と、俺のなんだか情けない気分と比例して延々とつづくのであった。
相変わらずの面倒くさそうで、かつ、はっきりとした声色でもって芦屋くんはつぶやいた。独り言というよりは俺へ、俺へというよりは窒素に、といった呟きであったので俺は一瞬黙して、そして首を傾げてみせた。
案の定芦屋くんはやたらかったるそうな顔をした。遅刻寸前、朝、シャツのボタンを一個ずらしちゃった時、みたいな。
「だから、何度も聞き返しても許してくれって、こと、だよ」
「なるほど」
言葉の足りない芦屋くん。面倒くさがってはしょっても結局再度説明を求められるのだと何回体感しても、彼はこの悪癖を改善しようとしない。
「どうしていきなり」
「説明しないと駄目ですか」
「まあ、気になるね」
「残念ながら、俺はそんなに気にならない」
「芦屋くんが気に留めるようなことなんてこの世にないっていう噂だけど」
失礼な、と胡散臭く笑って芦屋くんはその極端に細長い指で、俺のこめかみを結構強く突いた。地味に、痛い。
「暴力反対」
「ボウリョクハンタイ、人間は暴力の元に胡座かいて生きてるんだぜ、厚かましい」
「そういうの巷では屁理屈っていうらしいよ」
「ああ、西東くんの特技のこと」
「そう、芦屋くんの口癖のこと」
くすくす、耳にかかる、空気が細かくふるえる、笑い声。薄い唇が、愉快そうにゆるうく釣り上がる。俺は芦屋くんのこういう笑顔が、やたらすきである。撫でたくなる。
「ねむい」
しかし表情はゆるぎなく冴えている。
「君はいっつもねむいらしい」
「西東くんはいっつも眠そうだ」
「こればっかりはどうしようも」
「でも君の顔はわりとすき、だね」
愛嬌があるよ。
思わず顔を上げた。芦屋くんは相変わらず怠そうに、しかし楽しげな笑みをうかべた。だから俺はこの顔に弱いのだと。
「照れるんだけど」
「照れた顔もかっこいいぜ」
「馬鹿にしてるだろ、性格悪ー」
「きこえないねー」
都合のよろしいお耳様だこと!芦屋くんのにやにや笑いは延々と、俺のなんだか情けない気分と比例して延々とつづくのであった。
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